旅に出よう(海外、その3)「バギオ(その2)」 [トピックス]

■ 少しは可能性を信じたが… ■

 バギオには植物園(Bauio Botanical Gargen)があるので行ってみた。園内を適当に歩き回り、ベンチの上に腰かけて休憩していると。年齢的に言うと22、23歳といったところか、アベックが私の隣のベンチに腰を下ろした。何となく会話が始まり、「園内を一緒に回ろう!」ということになった。

 一通り回ると、彼らから「夕食でも一緒にどうですか?」と誘われた。特に怪しい御誘いにも思えなかったので、「いいですよ」と答え、私の泊まっている宿で待ち合わせることにして、一旦彼らとは別れた。

 彼らは、ほぼ約束した時刻に宿にやってきた。3人で通りに出ると、男性の方が「どこかいいレストランは知っているか?」と聞いてくるので、もちろん「初めての町なので分からない」と答えると、「じゃあ、僕が知っているのでそこへ行こう!」ということになった。

 それで、そのレストランに向けて歩いているときのことである。彼が、「あっ、いけない。銀行のATMへ行ってお金を下ろさないと」と言い出し、私たちは近くにある銀行へ向かった。

 現在は、ATMは銀行だけでなく、駅や街中でもよく見かけるが、当時は恐らく銀行くらいだったように記憶している。それで、銀行に行くと、サービスの時間外でATMを利用することはできなかった。

 彼は、「いや~、困ったな!どうしよう?」と言いだし、私にこう提案してきた。

 「ここで食事は止めてもよいのだが、せっかく知り合ったし、いろいろと日本の話も聞きたいので、必ず明日返すので食事代を立て替えてくれないだろうか?」

 私は、「さて、どうしたものであろうか?」とちょっと悩んだが、一応彼の言葉を信じて、OKとうなずいた。ただ、念を押しておいた。「立て替えるのは構わないが、もし、お金が戻ってこなければ、旅を続けることはできないので…」と…。

 彼は、「絶対返すよ。宿泊している宿だってしっているんだから、心配しないでくれ!」と断言したので、私たちは再びレストランへ歩みを変えた。

 レストランは、高級とは行かないまでも、そこそこのレベルのレストランで、中央ではダンスショーなども行われていた。正直言うと、どのような料理を食べたのかはもう記憶にない。

 私たちは、一通り、食事やショーを楽しみレストランを後にした。もちろん、会計は私が済ませ、日本円で合計5,000円近く支払ったように記憶している。そして、3人で「楽しかったね!」などと会話をしながら、再び私が宿泊している宿へ向かった。

 そして、宿の前で「じゃあ、明日、必ずチェックアウトの時間までには返しに来るから」という彼の言葉を信じて、彼らと別れた次第である。

 翌日、私は北部のバナウェに移動するために、宿を11時にチェックアウトしなければならなかった。「来るかな~」と少しは可能性を信じたが、彼らは現れることはなかった。もちろん、そういうことも十分にあり得るとは思っていた。私は、バックパックを背負い宿を後にした。

 しかし、「彼らは、最初に植物園で私に声を掛けたときからそのつもりだったのであろうか?」とか、「それとも、最初はそのつもりはなかったが、たまたまそうなってしまったのか?」、または「最初からそのつもりだったのであれば、これからもそういう人生を送るのであろうか?」などといろいろと思い巡らしてしまった。

 いずれにしても、まあ、授業料としては、決して「安い」とは言えなかったが、勉強させていただいた次第である。もちろん、彼らの分の食事代が戻らなかったからと言って、旅が続けられなかったわけではない。

 


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